傅 益瑶の世界

  水墨画家・傅益瑤(フ・イーヤオ)さんは、中国近代画壇の巨匠、傅抱石の三女で、1980年に国費留学生として来日して以来、院展の塩出英雄氏や平山郁夫氏に師事。又、NHK趣味百科『水墨画への招待』の講師としても好評を博しました。

 主な作品に、京都・大原三千院の襖絵、比叡山延暦寺国宝殿壁画「佛教東漸図」、福井県永平寺(曹洞宗大本山)の「祖道傳東図」(全36図)、鎌倉市鶴岡八幡宮の「鎌倉流鏑馬神事」、「諏訪大社御柱祭木落しの図」などが挙げられますように、ライフワークとして仏教的な題材や日本の祭にも精力的に取り組み、神社仏閣等でより多くの皆さまに楽しんでいただくことを希望されております。

 

  傅 益瑶さんの父君は、中国が生んだ著名な現代画壇の巨匠・傅 抱石画伯(1904-65)です。傅先生は1933年に日本に留学、帝国美術学校(現武蔵野美術大学)において学ばれ、美術史家として、また画家として活躍、戦後は新生中国の創建に尽力され、中国画壇に確たる地位を築き上げられた、立派な芸術家であります。私は北京を訪れるたびに人民大会堂などで画伯の大作にふれ、傅先生の大いなる気概に深く感銘を受けています。

                           平山 郁夫(日本画家)

 

 

傅 益瑶さんは、その父君の血を受け継ぎ、中国伝統の水墨画技法と、日本画の技法を見事に取り入れ、ジャンルを越えた独自の創作活動でわが国においても高い評価を得ております。ここ二、三年、自らの新境地開拓目覚ましく日本全国の祭りを取材しそれらを描いた「五彩十二祭」そして大原・三千院、上田・常楽寺、横浜・円満寺等の襖絵など、自然と人間をテーマとした一連の大作には目をみはるものがあります。

いま中国は再び高揚の時期を迎え、中国画壇も大きく飛躍しようとしています。傅 益瑶さんが日本での研究成果をもっていっそう中国現代画壇の発展に寄与されますことを期待すると同時に国際的な画家として大成されますよう期待しています

                    平山 郁夫(日本画家)

 慈覚大師円仁の生誕千二百年を記念して中国のすぐれた閨秀水墨画家 益瑶さんが「円仁入唐求法巡礼図」の意欲的なシリーズを成就したことはたいへん意義の深い芸業でご同慶の至りである。その内容は唐朝の裏面史を伝える上でも有名な慈覚大師の「円仁入唐求法巡記」を題材として、そこから 益瑶さんが生き生きと構想した二十五図である。歴史にも詳教養も高い傅さんが直接に大師の求法遺跡を訪ねながらまとめたものだけに、とてもい余人には求められない興味多い情景が展開されている。

  益瑶さんは一九七九年かつて父も学んだ日本に留学武蔵野美術大学や東京芸術大学に籍をおいて塩出英雄や平山郁夫の指導を受けた。展覧会などで進んで作品を公表し、各地の風物をはじめ、舞踏や祭礼など日本社会の生彩豊かな群像、景観などの表現に力を発揮して好評を博した。さらに、各地の寺院の障壁画などに意欲的な大作をこころみ、父君から受けた筆力ゆたかな中国画の伝統に日本で習得した活気ある美観を加えながら独特の生気とニュアンスもつ水墨画を展開している。

        河北倫明(美術評論家、日本美術評論家協会元会長)